人生何が起こるかはわからないと言うものの、粗方予想はできてしまうことの方が多い。
それは別に予知能力があるとかいう話ではなく、過去の経験から大抵推測できるのと、あとは勘というやつが働くこともある。
けれども今回ばかりはそのどちらとも役に立たなかった。
もはや子供だましとかそういうレベルではない。喉がひり付くほど甘いミルクティーを啜りながら、は普段縁がなくてあまり通らない、放課後のグラウンド沿いをとぼとぼ歩く。
校内の自販機に新商品として入れられていたからという安直な理由でそれをチョイスしたことを大いに後悔して。
「?」
ふと、賑やかなグラウンドの方向から聞き覚えのある声に呼び止められ、は重い足取りを止める。
何事かと声がした方を見れば、馴染みのない服装の上に乗っかった見知った顔を持つ男がぶんぶんと手を振っていた。
「あ、大和猛」
「どうしたんだよ、そんな難しい顔して」
あと何でフルネーム?
丁度部活の休憩中だったようだ。困ったように笑い駆け寄ってきたクラスメートの姿に、は眉間に刻んだ皺を更に深くする。
大和猛。同じクラスの男子生徒。以上。
教室に居る時は席が近くという事もあり他愛もない雑談こそすれど、彼がやっているスポーツはラグビーではなくアメフトであるという事をギリギリ知っているくらいの知識しか無い為、大和のユニフォーム姿は見慣れず、目のやり場に困ってしまう。ただでさえかなりの長身で居るだけで目立つというのに、彼が自分の人生そのものであると宣うスポーツのフィールドを背に立つ姿はまるで物語の主人公のようだとは思った。
「ミルクティーが不味くて」
「えっ?」
「いや、何でもない。ってか大和のそのカッコ初めて見たかも!すごく似合うね」
「……!……ははっ、そりゃどーも?」
大和は一瞬目を大きく見開いたかと思えば、次の瞬間大きな体をくの字に曲げて、快活な声を上げ笑った。癖のある毛先を伝う汗が、西日に反射して奇麗だった。あまりに豪快に笑うので、がつられて苦笑いをしていると、後方からチームメイトが「おーい大和、そろそろ」と呼ぶ声がした。大和は「今行く」と断り、再びに向き直る。
「なあ、。よかったら今度試合見に来てよ」
「え」
「ほらー……あれだ。ユニフォーム姿を褒めてくれたお礼に。招待する」
「えー……?……。考えとくね」
「ああ、絶対な」
力強く言い残した大和は運動とは無縁の帰宅部のも、他のスポーツをやっている人間でも到底追いつけないようなスピードで仲間達の元へと戻っていった。
「絶対、か」
念を押すかのように言い残された言葉を繰り返し、当ての外れたミルクティーを啜る。
そう、人生何が起こるかはわからない。良くも悪くも。
けど、こりゃー多分、きっと、行ってしまうんだろうな、私は。
経験ではなく、110%勘だった。頭の中で、彼の宣言通り試合を観戦する近い未来の自分の姿を思い描きながら、まずは明日アメフトのルールを大和に教えてもらおうとは考えていた。
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10% roll,10% romance 子供だまし/主人公/追いつけない(title:UNISON SQUARE GARDEN)